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退職時の業務引継ぎ VS 退職代行(2025.4.7)


社長:退職代行が気に食わない。何とかやり返したい。

社労士:無料で使えるサービスと思って、便利に使いましょう。


新年度を迎えて、さっそく新入社員が退職代行を使って会社を辞めているというニュースを聞きます。


この退職代行、会社側はどのように対応するのがいいでしょうか。


基本的には、退職代行を使ってきたなら、会社側はそこに全乗っかりして「タダで退職代行が使えた」くらいの受け止めをした方がいいと思っています。


どうしても後足で砂をかけるかのような辞め方に感じてしまい、面白くないという思いもあるかもしれません。


しかし、断言しますが退職代行を使って辞めようとする人材は、引き止めたとしても、もうこの先御社に貢献してくれる可能性はゼロです。


仮にそういう人物が、きちんと筋を通して、自分の口で退職の意思を告げてきたとしても、結局「面白くない」という感情自体は変わりないのではないでしょうか。


辞め際に従業員と罵り合いになったケースを私も過去の職場で何度か目にしました。不毛です。


そんな生産性のない局面に至るくらいなら、退職代行という第三者が入ってくれた方が、円満円滑に退職手続きが進むというのもです。わざわざお金を払って第三者を調達してくれてありがとうくらいの受け止めが一番だと思います。


どちらかというと問題は、退職代行会社が「使者」としての役割しか果たせない場合です。

「使者」は代理人と違って、従業員の代わりに交渉するとかは出来ません。


おそらく大抵の退職代行業者はこの類でしょう。

この場合、退職の意思を伝える、会社側からの応答を伝えるといった、伝書鳩的な役割しか果たせません。


未払い残業代などの処理や業務の引継ぎ、貸与物を巡って揉めていたりすると、こうした業者に出来ることはありません。従業員の代弁者として代わりに交渉すると弁護士法違反になってしまいます。


弁護士が退職代行を引き受けて代理人として来てくれていれば一番いいのですが、その場合依頼料が高くつくはずなのであまり期待できません。


揉めている時は、不用意に退職代行会社を利用するとかえって損失を被る可能性がありますから、きちんと「代理人になれる弁護士か、代理権限のある親族、さもなければ本人が直接対応するように」と伝えましょう。その伝言を退職代行に頼むのは問題ありません。


揉めている時の対応は揉め事の内容次第で千差万別ですから、一般論は語れません。

とりあえずこの場合に「使者しかできない退職代行」は邪魔ですので、速やかにどいてもらいましょう。


退職代行を使おうと使うまいと、急に辞められると困るのは業務の引継ぎです。


そのような観点で言えば、就業規則に退職時の引継ぎについて明記しておき、引継ぎ未了のまま退職代行を利用することは禁じておくというのは一案です。


ただこの場合も、期待できるのはせいぜい抑止力であって、実際に退職代行を使われたら大して打つ手はありません。


結局、退職代行を使われたらもうそこで縁は切れたのです。


重要なことは、退職代行を使う気を起こさせない組織作りです。

皮肉なことですが人材が定着する会社というのは、従業員が辞める気になったら気軽に辞められる会社なのです。


どうしても退職代行を使わせたくないなら、例えば、「会社が求める引継ぎ業務を全うした退職者には再就職支援金5万円を支給する。ただし退職代行を利用して退職する場合は支給しない」とか、定めておくことです。

退職代行を避ける動機付けにはなるでしょう。その代わり、辞めていく人間に追い銭をするわけで、引継ぎの確保と引き換えに結構な金額を負担することにはなります。


引継ぎが死活的に重要なら検討してもいいかもしれませんが、一般的にはお勧めしませんね。



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