従業員請負による手取り増 リスク回避編(2024.11.22)
前回の投稿では
「従業員請負による手取り増のメリット」を
お話ししました。
今回はリスク回避編です。
前回も言いましたように、
このスキームは「偽装請負」と表裏であり、
昔から問題視されてきたもの。
偽装請負を回避しながら本スキームを実行するため、
以下の四か条をお示ししました。
1 外注するのは仕事のうち最大2割程度
2 指揮命令はしない
3 任せた仕事の割合に応じて勤務時間も減らす
4 請負仕事は社外でやってもらう
順番に行きましょう。
1 外注するのは仕事のうち最大2割程度
偽装請負で特に問題視されたのが、
従業員を請負にして
全員解雇という無茶苦茶なケース。
負担軽減に誘惑されて
とんでもないフェーズまで突っ込んだ事案ですね。
現実問題として、
本当に指揮命令から外れた
外注可能な業務というのは、そう多くないはずです。
そのあたりの現実的可能性から
「最大2割」とさせてもらいました。
2 指揮命令はしない
結局、請負と雇用を分ける
決定的な基準が指揮命令関係にあります。
偽装請負が何かと問題になったのは建設業です。
建設現場で職人との間に
指揮命令関係があるのに
雇用ではなく請負にしていた。
これはそのものズバリ偽装請負です。
請負である以上、
指揮命令は絶対にしてはいけません。
たちどころに偽装請負になってしまいます。
3 任せた仕事の割合に応じて勤務時間も減らす
先日のスキームでは
2割任せたなら、給与も2割減にして
減らした分を請負代金に充てていました。
給与を減らすなら、
同じ割合で勤務時間も短くしないと
ただの減給です。
その短くした時間を
請負仕事に充ててもらおうということ。
(実際に充てるかは本人の自由)
こうしないと労働者に不利益が発生します。
労使双方にメリットがあるという点が重要ですから、
ここは厳密にしましょう。
4 請負仕事は社外でやってもらう
典型的な偽装請負では
タイムカード上でだけ退社させ、
実際の業務は社内で行うといった
事案が多いです。
それで「指揮命令はしていない」というのは
なかなか通りにくい。
美容院などで
スタッフを請負にして
店舗で接客させるなどの展開がありますが
かなりギリギリです。
事務仕事の外注であれば
基本社外にしたほうがいいでしょう。
作業場所が社外か社内か。
これは指揮命令関係のなさを主張するうえで
決定的ですから、
なるべく社外にすべきです。
番外:その他の注意点をまとめて
請負契約書・発注書・納品書などはちゃんと整える
請負代金の支払いと給与支払いは別の日にする
業務に要する備品類(パソコンなど)は貸与しない
請負金額を時間給にしない
★★
ついでに言っておくと
「従業員請負」による負担軽減は
実行したとしてもハローワークや年金事務所が
把握することは困難です。
従業員は相変わらず従業員ですから
被保険者のままです。
被保険者数に変動がなく
給与額だけの変動で
問題視することは考えにくい。
賃金台帳に乗らない請負の契約関係を
ハローワークや年金事務所が把握するとしたら
従業員からの告発でしょう。
しかし本スキームは適切に実行する限り
本人にもメリットがあるので
告発は考えにくい。
行政から問題視される可能性があるとすれば
税務署です。
その場合も、
偽装請負問題を回避する
上記の諸点を押さえていれば
何も問題は起きないでしょう。
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