モンスター社員を懲戒処分にできない会社とは(2025.1.17)
事業主:同僚に対して乱暴に脅しつけたり、会社の悪口を言ってほかの社員の退職をそそのかしたりする従業員がいるから、クビにしたい。どういう手順を踏めばいいか?
社労士:まずはきちんと懲戒処分をすべきです。御社に就業規則はありますよね?
事業主:就業規則は作ってない。
社労士:えっ・・・・?
はい、就業規則のない会社において従業員を「懲戒処分」にすることはできません。
懲戒処分とはそもそも「就業規則に違反した者への懲戒」だからです。
刑罰を科すには、あらかじめ何が犯罪で、どんな刑罰が科されるか定めておかなくてはならない、という原則を罪刑法定主義と呼びます。
この罪刑法定主義は、社内統治の場面でも適用され、会社はあらかじめ「どんな行為がどんな処分を受けるか」就業規則に定めておかないとなりません。
簡単に言ってしまえば、就業規則のない会社=ルールのない会社なのです。
ルールがない以上、ルール違反も起きません。ルール違反がない以上、処分も出来ません。
社会通念に照らして不品行があったとしても、それを道義的に非難することはできますが、懲戒処分を科すことはできないのです。
冒頭の会社で、もし懲戒処分をすっ飛ばして解雇した場合、事後にその従業員が不当解雇を主張して裁判に打って出たら、会社が勝つのはかなり難しい。
悪くすると1~2年に及ぶ裁判期間中の給与を全額支払わされます。
不当解雇をめぐる訴訟で負けると、1千万円くらい簡単に吹き飛びます。
だから社労士は(おそらく弁護士も)、大前提として解雇は避けよ、と助言するのです。
基本的には、懲戒処分を重ねて、退職勧奨を試み、場合によって特別退職金を握らせてでも、自主的な退職をしてもらうことを目指すのです。
就業規則がないと、この第一歩である「懲戒処分」のところですでにつまづきます。
流石にこのレベルでは戦えないので、急ぎ就業規則を作ってルールある会社にすることです。
あまり作りこまない、ヘボい就業規則でも、何らかの懲戒規定くらいはあるはずですから、ないよりはよっぽどマシです。
就業規則は様々な場面で会社を守ります。
というかそのために作ります。
冒頭挙げたような問題社員から、ほかの従業員を守る機能もあるわけです。
従業員のためにも、就業規則を整えていない会社は速やかに整備すべきでしょう。
なお就業規則作成を社労士に依頼する場合、金額は次のような相場です。
ちゃんと作り込む → 20~30万円
ほどほどに作り込む → 10万~15万
外形だけ整える → 5万
言うまでもなくちゃんと作り込んだ方がいいですが、外形だけ整えるのに5万払うくらいなら、厚労省の就業規則作成支援ツールを用いて自分で作った方がいいでしょうね。
なお上記の「ほどほどに作り込む」とは、
例えば助成金手続きに通るように、特定の項目だけは助成金の要件を満たすよう作り込む、くらいのケースを想定しています。
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